7月13日付日経新聞「日曜日の人生設計」より
〜持ち家と賃貸、選択の決め手は〜

<記事要約>

持ち家と賃貸のどちらが得かは人生設計の永遠のテーマだ。

不動産市場が効率的であれば、持ち家と賃貸に優劣はない。明らかに持ち家が得であれば賃貸を選ぶ人はいなくなるし、逆に誰もが賃貸が得だと思えば家を所有する人はいなくなる。
このようなことが起こらないのは、市場経済の基本である「神の手」が不動産市場にも働いて、損も得も無いように不動産価格と賃料をバランスさせているからだ。

では持ち家と賃貸はどこが違うのか?それはリスクの所在が異なるのである。

不動産は経済環境に応じて価格が変動するものなので、不動産を所有するということはその価格変動リスクを一身に負うということになる。一方、賃貸であれば不動産の投資リスクからは開放されるが、当然地価が上昇してもその果実を得ることはできない。

持ち家か賃貸かはリスク選好度によって決まる。
つまり不動産市場のリスクをとりたくない人は賃貸を選ぶし、保守的な人は借金をせず現金で一括購入する。逆に大きなリスクをとりたい人は住宅ローンでレバレッジ(※)をかけてマイホームを購入する。

日本人はリスクを好まないと言われるが、実は個人も企業も不動産市場にハイリスクな投資を行ってきた。
そしてバブル崩壊後の今も多くの人がマイホームという名の危険な投資に好んで金を投じているのだ。




※「レバレッジ」とは「てこの原理」を意味し、少額の投資資金で大きなリターンを期待することをいいます。
今回の場合では頭金が投資資金にあたり、大きなリターンがマイホームという意味で良いと思います。

<例>○○保証金取引は少ない保証金で大きな取引金額を売買するレバレッジ効果の高い金融商品です。

<不動産会社からひと言>

結論を見ると、筆者はアンチ持ち家派かなとも思うのですが、マイホームを買う(あるいは買わない)ということを純粋に投資行為としてリスクをとるかとらないかという観点で評価するのは面白いと思います。

確かに終身雇用や給与の安定的な上昇が必ずしも期待できない一方で、デフレにより貨幣価値が上がっていることを考えれば、マイホーム購入という大きな負債を抱える投資を行うことはリスクに違いありません。

しかし不安定な世の中(これには経済的な意味だけでなく戦争や天災といった要素も含まれていると考えます)だからこそ安定的な自分だけの不動産を所有したいというのも、不動産という資産に特別な感情をもつ多くの日本人にとっては素直に理解できる感情ではないでしょうか(ここ数年のマンション建設ラッシュにしても、低金利や企業の遊休資産処理などの表面的な要素に加え、消費者側の感情面に由来するニーズも強く影響しているのではないかと思います)。

少なくとも本文にあるように、マイホームを大きなリスクをとる代わりに大きなリターンを求めるという考え方で購入する人は今やかなりの少数派で、むしろ諸々の事情で住むところがなくなってしまうかもしれないという潜在的且つ最悪の事態を回避するためにマイホームを購入し、その結果として借金という新たなリスクをとっているという点を忘れてはいけないと思います。
つまりマイホームを購入するということには、リスクを避けたいために新たに大きなリスクを背負うという矛盾した一面が間違いなく存在し、それが、「持ち家か賃貸か」というテーマを普遍のテーマたらしめる所以であるともいえます。

マイホームを持つということを、満足感や人生の目標という観点で捉えれば、リスク云々での比較はしきれません。
また、個人・会社・国というものの先行きに不安がなければ「持ち家か賃貸か」は投資として、理屈で考えることも可能です。
しかしそれらに多少なりとも不安があるということが前提で、且つ満足感という感情面を一旦除外するならば、マイホームを買おうと買うまいとリスクは形を変えているだけで、その総量は変わっていないわけで、そんな中でマイホームを買おうとする人が多いとすれば、それは「地べたがあればとりあえず安心」という、かつてとは違う消極的な形で土地神話が残存し、マイホーム購入という投資行為が理屈だけではなく感情にも強く影響を受けて行われているということの証左であるともいえるのではないでしょうか。